〜後頭下筋群から考える、デスクワーク時代の身体の不調〜
「目が疲れる」
「首や肩がいつも重い」
「スマホやパソコンの後、頭のつけ根が固まる感じがする」
このようなお悩みは、デスクワークやスマホの使用が多い方にとてもよく見られます。
こうした不調の背景には、後頭下筋群(こうとうかきんぐん)という、頭のつけ根にある小さな筋肉の集まりが関係していることがあります。

後頭下筋群とは?
後頭下筋群とは、頭のつけ根の深いところにある4つの小さな筋肉です。頭を少し動かしたり、向きを微調整したり、頭と首の位置を安定させる役割があります。
この筋肉の大きな特徴は、筋紡錘(きんぼうすい)という”位置や動きを感じ取るセンサー”が非常に多いことです。後頭下筋群は、首の中でも特に筋紡錘密度が高い筋群として知られており、頭・首の位置感覚や眼と頭の協調、姿勢の調整に重要だと考えられています。
体験してみよう
後頭下筋群と目のつながりを感じやすい簡単な方法があります。
頭のつけ根の外側にそっと指を当てたまま、ゆっくり左右を見るだけです。
すると、頭のつけ根の奥の筋肉が細かく反応するのを感じます。これは、頭と目の向きを調整するために首の深い筋が働いていることを体感しやすい方法です。首の深部筋は眼と頭の協調に関わる感覚入力を多く持つため、このような連動性の説明としては理にかなっています。
なぜ「目」と「首」がつながるの?
私たちは、目だけで周囲を見ているわけではありません。実際には、
- 眼球の動き
- 頭の向き
- 首から脳へ届く位置情報
これらを組み合わせて、視線や姿勢を調整しています。上位頸部の感覚入力が乱れると、眼と頭の協調やバランス、視覚の安定に影響が出ることがあると報告されています。
つまり、目をよく使う生活は首にも影響しやすく、首が固まると逆に目の使いやすさにも影響しやすいということです。
デスクワークやスマホで後頭下筋群が硬くなりやすい理由
長時間のパソコン作業やスマホ使用では、頭が少し前に出た姿勢になりやすくなります。このような前方頭位姿勢では、後頭下筋群を含む上位頸部まわりの筋に負担がかかりやすく、首の痛みや頭痛、姿勢の崩れとの関連が指摘されています。
「目が疲れるから首がつらいのか」「首が固いから目までしんどいのか」——実際にはその両方が絡み合っていることが多いです。とくに、画面を見る時間が長い方ほど、目・首・肩が一緒に疲れやすい状態になりやすいと言えます。
首や肩だけでなく、姿勢全体にも影響します
後頭下筋群は小さな筋肉ですが、頭の位置を安定させるうえでとても重要です。そのためここが過緊張になると、首や肩だけでなく、バランスや頭頸部の動かしやすさにも影響が出ます。首からの感覚入力の乱れは、姿勢制御やバランス機能に関係することが知られており、結果として背中や腰まで余計に頑張る状態につながることがあります。
「首こりなのに、背中まで張る」
「目が疲れる日に、腰まで重い」
そんな方は、単なる肩こりではなく、首の深い筋の疲労も気にかけてみてください。
セルフケア
無理なくできる、やさしい方法をご紹介します。
STEP 1|後頭下筋群に手を当てる
自然な姿勢のまま、両手の指で首の付け根の少し外側をそっと押しながら当てます。
STEP 2|首をゆっくり上下に動かす
深呼吸をしながら、頭をゆっくりと上下に動かします。10回ほど続けてください。
ポイントは、強く押したり、ただ回数をこなすのではなく、リラックスしながら、筋肉がほぐれていく感覚を大切にすることです。
⚠ 首の痛みが強いとき・めまいがあるとき・しびれがあるときは無理に行わないようにしてください。

声や飲み込みにも関係するの?
後頭下筋群そのものが、直接「発話」や「嚥下」を起こしているわけではありません。ただし、頭頸部の姿勢や首まわりの緊張は、飲み込みや声の出しやすさに影響しうることが報告されています。
そのため、首や頭の位置が崩れている状態が続くと、
- 飲み込みにくい
- 声が出しづらい
- 喉まわりが詰まる感じがする
といった不快感につながることがあります。「すべて後頭下筋群が原因」と断定するのではなく、頭頸部全体の姿勢・緊張の問題として見ることが大切です。
当院ではこう考えています
当院では、首こりや肩こり、目の疲れを「首だけの問題」とは考えていません。
- 頭の位置
- 眼の使い方
- 呼吸
- 首の深い筋の緊張
- 日常生活での姿勢・環境
こうした背景まで含めて確認し、身体全体として整えていきます。
「目が疲れるのは仕方ない」「デスクワークだから首こりは当たり前」——そう思っていた不調でも、見直すポイントが変わると、体は変わっていきます。
目の疲れと首こりは、別々の問題に見えて、実は深くつながっています。そのカギのひとつが、頭のつけ根にある後頭下筋群です。
首や肩がつらい方、デスクワークやスマホで目を酷使している方、「なんとなくずっと不調」が続いている方は、一度、頭のつけ根の緊張にも目を向けてみてください。
